卒FIT後の売電先比較で「どこに売ればいいか分からない」と悩む法人オーナーは少なくありません。私はAFP・宅地建物取引士として都内で法人を経営しており、自身の法人でこの判断を実際に検討しました。本記事では、卒FIT比較において見落とされがちな6つの選定軸を、数字と実体験を交えて整理します。最終判断は必ず税理士や専門家に確認してください。
卒FITの基礎と現状整理|2026年時点で押さえるべき前提
FIT終了後に何が変わるのか
固定価格買取制度(FIT)の買取期間は、住宅用10kW未満で10年間、産業用10kW以上で20年間です。期間満了後は国が定めた固定単価の保護がなくなり、電力会社や新電力各社との相対交渉に移行します。
2019年以降、順次「卒FIT」を迎える設備が増え、2026年現在は産業用・法人所有の設備でも続々と満了時期が訪れています。この段階で「何もしなければ電力会社のデフォルト単価(概ね8〜9円/kWh前後)に自動移行する」という点を、まず認識しておく必要があります。
デフォルト移行は手続きが不要な分、単価交渉の機会を逃す典型的なパターンです。私が法人運営の観点からこの問題を調べ始めたのも、「何もしない選択のコスト」に気づいたことがきっかけでした。
法人が卒FIT後に取り得る3つの選択肢
卒FIT後の選択肢は大きく3つに整理できます。①新電力・電力会社への売電継続、②自家消費への切替、③蓄電池を組み合わせたハイブリッド運用です。
法人の場合、自家消費切替による電気代削減は損金計上の前提となる事業費用の圧縮につながります。ただし「どの選択肢が有利か」は設備容量・立地・電力消費パターンによって大きく異なるため、個別の事情に合わせた試算が不可欠です。税務上の取り扱いについては、必ず顧問税理士に確認することを推奨します。
次のセクションから、私が実際に法人で精査した6つの選定軸を具体的に解説します。
売電先比較6つの選定軸|私が法人で実検討した判断基準
選定軸①〜③:単価・契約期間・解約条件
卒FIT後の売電先を比較する際、まず確認すべきは買取単価です。2026年時点の相場観は後述しますが、単価だけを見て飛びつくのは危険です。私が複数の新電力と交渉した際に痛感したのは、「高単価には必ず理由がある」という事実でした。
選定軸①:買取単価(税込か否かの確認を含む)
提示される単価が税込か税別かで実質額は変わります。法人の場合、消費税法上の取り扱いも確認が必要なため、契約書の文言と顧問税理士の確認を必ずセットにしてください。
選定軸②:契約期間の長短
1年更新型と3〜5年固定型では、リスク特性が異なります。短期型は単価見直しの機会がある一方、相場下落時に巻き込まれるリスクもあります。固定型は安定性がある反面、市場単価が上がっても恩恵を受けにくい構造です。
選定軸③:解約・途中変更の条件
自家消費切替や蓄電池導入を検討する可能性がある場合、途中解約の違約金条項は事前に必ず確認します。私が見た複約書では、残存期間の買取見込み額の一定割合を違約金とする条項が複数ありました。
選定軸④〜⑥:信用力・精算方式・自家消費切替の柔軟性
選定軸④:電力会社・新電力の財務健全性
2021〜2022年の電力市場高騰局面で、複数の新電力が事業撤退または供給停止に追い込まれました。売電先が倒産した場合、売電収入が一時的に途絶えるリスクがあります。法人の資金繰りに影響するため、相手方の財務安定性は重要な選定軸です。
選定軸⑤:精算タイミングと入金サイクル
月次精算か2ヶ月後払いかで、キャッシュフローへの影響は異なります。法人の決算月と精算タイミングのズレが損益計上に与える影響についても、顧問税理士と事前に確認しておくことを推奨します。
選定軸⑥:自家消費への切替柔軟性
将来的に自家消費モデルへ転換する可能性を残したい場合、売電契約が切替の障壁にならない設計かどうかを確認します。この点は契約書の「用途変更条項」として明記されているケースとそうでないケースがあり、見落としが多い箇所です。FIT卒業後の売電価格2026|法人で試算した7つの収益判断軸
買取単価の最新相場2026|数字で把握する卒FIT市場
2026年現在の買取単価レンジ
2026年現在、卒FIT後の売電先が提示する買取単価は、おおむね以下のレンジで推移しています(あくまで参考値であり、契約内容・地域・設備容量によって異なります)。
- 大手電力会社のデフォルト移行単価:7〜9円/kWh前後
- 新電力・アグリゲーター系:10〜14円/kWh前後(条件付き)
- PPAや自家消費型モデルへの転換:電気代削減効果で実質15〜20円/kWh相当になるケースも
この数字を見ると、デフォルト移行がいかに機会損失につながるかが分かります。仮に設備容量50kW・年間発電量55,000kWhの法人設備を例にとると、単価が8円と12円では年間の売電収入差は約22万円になります。10年累計では220万円規模の差が生じる計算です(個別の発電量・稼働状況により大きく異なります)。
単価比較だけで決めてはいけない理由
私がAFPとして資金計画を考える際に強調するのは、「期待リターンだけでなくリスク調整後の実質値を見る」という視点です。高単価を提示する新電力の中には、電源調達コストの変動をそのまま購入者に転嫁するプランを持つ事業者もいます。
卒FIT比較においては、単価の絶対値だけでなく「変動リスクの所在」「契約期間中の改定条項の有無」「精算の透明性」をセットで評価することが重要です。不動産投資や株式運用の経験から言っても、表面利回りだけで意思決定して後悔するパターンは太陽光でも再現されます。
自家消費切替の損益分岐|法人電気代削減との比較試算
自家消費切替が有利になる条件
卒FIT後に自家消費へ切り替えるメリットは、「売電収入を得る」のではなく「電気代を削減する」という発想の転換にあります。法人の場合、電気料金単価が高いほど自家消費の優位性が増します。
2026年現在、法人向け電力料金の従量単価は地域や契約種別にもよりますが、25〜35円/kWhのレンジが多く見られます。この単価で年間30,000kWhを自家消費に回せた場合、電気代削減効果は年間75〜105万円規模になります(実際の削減額は需要パターン・契約形態で異なります)。
売電単価12円/kWhと比較すると、自家消費の「節約効果」は単純計算で2倍以上になるケースも珍しくありません。ただしこの試算は自家消費できる電力量が安定していることを前提とするため、法人の操業時間帯と発電時間帯のマッチングを確認する必要があります。
損益分岐点の考え方と注意点
自家消費切替には、場合によってはパワーコンディショナー(PCS)の改造費用や電気工事費が発生することがあります。工事費用の相場は設備規模にもよりますが、数十万円から数百万円規模になるケースもあります。
この初期コストを年間の電気代削減効果で割り返した回収期間が「損益分岐の判断軸」になります。私が法人の設備検討をした際には、この試算を税理士と共有した上で、資産計上・減価償却の処理方針についても事前に相談しました。工事費用の会計処理は個別判断が必要なため、必ず顧問税理士に確認することを推奨します。FIT太陽光2026年単価|法人で精査した7つの売電収益判断軸
蓄電池併用の試算結果|卒FIT法人が得られる経済効果の実態
蓄電池導入で変わる収支構造
蓄電池を太陽光設備と組み合わせることで、昼間に発電した電力を夜間や需要ピーク時に活用できるようになります。これにより、自家消費率を高めながらピークカット効果も得られるため、基本料金の削減につながるケースもあります。
産業用蓄電池の導入費用は、2026年現在で容量50kWhクラスの場合おおむね500〜900万円前後が相場感です(メーカー・施工条件により大きく異なります)。一方で、補助金(経済産業省や地方自治体の再エネ関連補助)を活用することで、実質負担を圧縮できるケースもあります。補助金の申請要件・採択条件は年度ごとに変わるため、最新情報の確認が不可欠です。
私が試算で得た結論と法人としての判断
私が自身の法人で蓄電池併用の収支試算を行った際、以下の条件整理を先行させました。
- 現状の電力消費パターン(時間帯別の需要グラフ)の確認
- 現行の電力契約(デマンド契約か従量契約か)の整理
- 補助金の活用可否と申請スケジュールの確認
- 蓄電池の法定耐用年数と減価償却計画の確認(顧問税理士と連携)
結論として、私の法人の現在の消費規模では、蓄電池単体での回収期間が12〜15年になる試算が出ました。補助金を最大活用しても回収期間は9〜11年程度で、設備の実態寿命と近接するため、現時点では導入を保留しています。この判断は私の法人の個別事情によるものであり、設備規模・電気代水準・補助金採択状況によって結論は変わります。
法人で実践した判断手順|まとめと売電先比較の次のステップ
卒FIT比較で私が踏んだ6つのステップ
- ステップ1:現状確認 FIT満了時期・現在の買取単価・契約形態を書面で確認する
- ステップ2:自家消費ポテンシャルの試算 時間帯別の電力消費データを取得し、発電量との重複帯を試算する
- ステップ3:複数の売電先から見積もり取得 単価・契約期間・解約条件・精算方式を横並びで比較する
- ステップ4:顧問税理士と会計・税務処理の確認 売電収入の計上区分、自家消費切替後の勘定科目、蓄電池の減価償却方針を確認する
- ステップ5:補助金・助成金の最新情報を収集 経産省・都道府県・市区町村の補助金情報を確認し、申請スケジュールに組み込む
- ステップ6:契約書の法的確認 解約条項・単価改定条項・需給バランス条件を確認し、必要に応じて専門家(弁護士・司法書士)に相談する
卒FIT比較の情報収集に役立つ次のアクション
卒FIT後の売電先選びは、一度決めると数年単位で収支に影響する意思決定です。私がAFPとして感じるのは、「情報の非対称性をいかに埋めるか」がこの分野のポイントだということです。
売電先の交渉では、相手方が業界の慣行を熟知している一方で、法人オーナー側が丸腰で臨むケースが多く見られます。一括比較サービスや専門のアドバイザリーを活用することで、交渉の土台となる情報を効率的に集めることができます。
卒FIT 比較を具体的に進めたい方は、まず複数の売電先の条件を一か所で整理できるサービスを活用することを推奨します。税務上の取り扱いや会計処理については個別の事情により異なりますので、最終判断は必ず顧問税理士または所轄税務署へご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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